新宿メロドラマ

安っぽいヒューマニズムは要らない。高いのを持ってこい。

レビュー

総統閣下は当時、凋落の途上にあったようです。

ヒトラーは、どのようにして政権を手に入れたかについての典型的な誤りは、「熱狂的な大衆に支持され、普通選挙で勝利した」というものだ。 以下のエピソードが世界的に問題化したことも記憶に新しい。 二〇一三年七月、麻生太郎元首相が、ヒトラーは一九三…

青い'90年代の香り。記憶の断片小説。

むかし「モバイル広告事業部長」として鳴らした若造がいて、当時はまだ25歳ぐらいだったが、 「無人島へなにかひとつ持ってくとしたら、何もってく?」という質問に 「Googleの検索窓ですね!」となめた返事をしており、こいつはまだまだ世間の厳しさを知ら…

海外事情とこの国のシナリオ。スパイにハッピーエンドはない。

おかげさまで12月も残り少ないので、引き続き駆け足にて今年読んだ本を振り返っていく。 TPPが大枠合意にいたり、不安がる国民に向けて「TPP断固阻止!」を叫んでついにブレイクを果たした堤未果。 とかく現状維持のモメンタムが強い日本ではこの手の言説は…

サイコパスの発音はドンタコスの発音とも同じです。

硬派な文学で名をあげたいと願ったにもかかわらず、そちらはまったく売れないで、手すさびに書いた探偵ものが爆発的にヒットしてやめようにもやめられず、泣く泣く書き続けるうち、不本意にもその道で歴史に不動の名を残すハメになった作家が、僕の知る限り…

目標未達のお知らせとお詫び、ならびに云い訳をお届けします。

のっけから気分の悪い話だが、今日は云い訳させてもらう。 先のエントリに述べたように、今年はついに年間50冊の読破に至らなかった。目標未達だ。 これにはいくつか云い訳の余地がある。 云い訳の1。 「1冊」というが、わたしは分冊を1冊にカウントしている…

このままだと正義が勝つっぽい件。

2014年の37冊目は "FLASH BOYS" (Michael Lewis / Kindle)。 随分時間をかけたが堂々原書での読破であって、当然中身全部は分かっていない。 とにかく「マネー・ボール」の映画化からこっち、日本でも注目を浴びている作家の最新作とあって邦訳が出るまえに…

乗るしかないのか、このビッグウェーブに。

本年36冊目の読書メモ。 「1997年--世界を変えた金融危機」(竹森俊平/朝日新書/Kindle)。 90年代の日本で起こったバブルの崩壊とそれに対応した金融政策、失われた10年の始まりについて学びたくてAmazonのページを繰ったところ出会った一冊だが、思いが…

女を買うこと。給仕人の夢。

「わたしは英国王に給仕した」という小説がある。 すでに没したチェコの作家・ボフミル・フラバルがわずか18日間で一気呵成に書き上げたといわれる作品だ。 フラバルは49歳でデビューした遅咲きの作家(もっとも、遅咲きにならざるをえなかった背景にこそ20…

長いお別れ。

大学の長い夏休みが明けると、教室に居並ぶ学生の背中は身体のなかに抑えきれない熱を抱えているように見えた。 教授の点呼に、はいと声をあげて答えるとその背中のいくつかが驚いたようにぴくりと動き、何人かが首を巡らせてこちらをうかがうのが見えた。 …

もしどら。

どうしても通らねばならぬ道がある。 子供たちは「桃太郎」や「赤ずきん」を読んでおかなければ世の物語を貫く基本的な筋道を理解することができないし、バーテンダーになったって、せめて分数の足し算ぐらいはできないとどうにもならない時がくる。 どんな…

許された盗撮としてのドキュメンタリーはフィクションに対し奇妙な近似を見せる。

渋谷は東急本店Bunkamuraシアターにて映画・「パリ・オペラ座のすべて 」を観劇す。 さて監督のフレデリック・ワイズマンなる男はドキュメンタリー職人であるということらしく、本作もセリフ・ナレーション一切なしで堂々160分という長尺だ。 世界に冠たるオ…

「幸運が、お前には必要になるだろう」と黒人は叫んだ。

< 日比谷・日生劇場にて「キャバレー」観劇。 「Das walt ist Kabaret ! 世界は、キャバレーだ!」とのっけから大見得を切る諸星和己がいけない。いつもテレビサイズのカメラが自分を追いかけているという錯覚が抜けないものだから、やはり生涯舞台には向く…

総理「記憶がございません」。

いやな記憶を消し、楽しい記憶だけを残して生きていくことができれば、人は幸せになれるだろうか。 記憶だけを移し替え、新しい肉体を乗り継いで永遠に生きていくことができれば、人は幸せになれるのだろうか。 難しい問いだ。 もっとも、そんな問いを抱かな…

亡国たすけあい運動。

NHKが年末に行う恒例の「たすけあい」運動に全盲のピアニスト・辻井伸行が参加していた。 「お前はたすけてもらえよ」と思わずテレビの前で声をあげるような僕について、非常に強く批難するタイプの方々がいらっしゃるが、こういうのはおそらく一生治らない…

生き延びることだけが僕の趣味だった。

「リトル・ダンサー」をほぼ10年ぶりにDVDにて観直す。 80年代イギリス。産業革命以来の栄華を誇った炭坑は、すでにその時代を終えていながら完全には役目を終えられず、産業としては極限まで先細りながら凋落していくという、もっとも多くの巻き添えを伴う…

わかった、要するにこの国の政治家たちはただの英雄なのです。

そんなある日NHKスペシャルで「証言ドキュメント 永田町 権力の興亡 第2回」が放映さる。音楽は川井憲治。 1996年の橋本内閣誕生からその退場以降、小泉純一郎の登場にいたるまでずるずると議席を減らし、誰の目にも「旧式のシステム」が取り返しもなく崩れ…

これ以上すき焼きを食うようだと、俺はお前を。

あなたの友人の年収が800万円で、借金は8,000万円あったとしよう。年収の10倍だ。 毎年200万円を返済に充てるのだが、同時にほかから同じ額を借り入れている。完全な自転車操業である。 何を思うだろうか。 これがあなたの暮らしている国の実態だ。 参考まで…

エヴァはもういい。エヴァが観たい。

正直エヴァンゲリオンには飽きてきた。 「飽き」たという物云いに語弊があるなら「もう観なくていいと思うようになった」と云いかえる。 豊かなアニメーションとしても、学生の時分に強烈なインパクトを受けた文学作品としても、その価値はいまだにいささか…

「坊やだから」では済まされない。

競争を勝ち抜くことを目的とし、相手の生死に斟酌しないととるならば経営とは戦争である。 だがそれ以上に戦争は経営だ。 アフタヌーン新書 006 ジオン軍の失敗 作者: 岡嶋裕史 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2009/05/08 メディア: 単行本(ソフトカバー…

根拠なき妥協の結果、赤羽に住むとする。

北区は東京23区であるからして何も極北の地というわけではないが、不毛な実態はその名のまとうイメージを上回る。 最大の都市と思われる赤羽ですらiPodを売っていない。 民は池袋へそれを購いに行く。 一駅北上すれば川口で手に入ろうが、彼らは河を渡るとそ…

自嘲や諧謔の域を超え、男はもうダメっぽいです。

「強い」とかそういう次元の問題でなく、女にはかなわないと常々考え続けている。 それは「ま、なんだかんだ云っても基本男の方が優位なんで、云うだけなら男の方が弱いとか下だとか云ってみてあげるのがむしろ男の優しさっていうか、俺ってジェントルマン?…

「重力ポテト」。

新宿はバルト9にて「重力ピエロ」を観る。 まず脚本家はもう、ほかの仕事を探した方がいい。 小説だってそうだが、映画は言葉のみによって成り立つのではないし、言葉を積み上げたところで小説にならないのと同様、言葉を書きつらねたところで映画はできない…

完全に真空な童貞。

「30歳の保健体育」を買う。 生まれてこのかた女性との交際経験がない30代の男子たちに恋の手ほどきをしようという趣旨のハウツー本(笑。 「現実の恋愛やセックスはアダルトゲームや恋愛RPGとは全く違います」(「はじめに」) 「まず、女性経験の無い男性…

「ラスト・ブラッド」が酷すぎる件についての走り書き。

よせばいいのに「ラスト・ブラッド」( http://lastblood.asmik-ace.co.jp/)を観に足を運ぶ。 「BLOOD The Last Vampire」の権利をフランスのプロデューサーが手に入れて実写化した作品で、「よせばいいのに」とは云うものの、アニメ界にそびえる原作の存在…

仕事/セックス:「境界線上のエクスタシー」。

「努力ゼロでやせる!『脳活性ダイエットCD』」がヤバい。 太るのは脳が怠けているだからだとのたまって、聴くだけで20kg痩せるだとかいうCDを売ろうとしている。 今朝の朝日新聞に広告が載った。 「努力ゼロでやせる!」 「20日聴いたら大幅にや…

日常のセックスが非日常とセックスの日常と俺。

買い物リスト: 松本大洋「竹光侍」 第6巻 島本和彦「アオイホノオ」第1巻 山本直樹「夕方のおともだち」 「NEWTYPE」6月号 「広告批評」7-8月号 バランスがうまくとれない。 とりあえず好きなくせに情報に疎いため発刊をしらなかった「夕方のおともだち…

廃人はすでに救済された我々である。

5月2日にひっそりと刊行された「ネトゲ廃人」を読む。 果たして電車の中吊りをチラとみただけで何も知らないまま購買にいたる私は最近、あらゆるマーケティングの餌食になっているが、それについてはまた改めて語る。 結論としては、さして読む価値のない…